正行寺講話について

序文 佐藤顕明

1992年、ジョン・ホワイト教授は、初めて日本の真宗寺院・正行寺を訪れ、住職の竹原智明師と本来的な出会いを果されました。このとき、ホワイト教授の精神は十分に熟し切っておられたのでしょう、この出会いを通して、大乗佛教の深遠なる真理に、特に日本においてその頂点を極めた浄土真宗に、触れられました。

1993年、正行寺で初めて講演されたホワイト先生は、その時の深い思いを次のような俳句で表現されました。

純粋な信仰の
あなた方と

何事にも
確信のない
私が

ただ一つの
道を
旅します


ホワイト先生はその後、美術史家としての輝かしいキャリアを捨てて、余生のすべてと全精力を注いで、ロンドンにある正行寺の道場「三輪精舎」(英名:Three Wheels)の設立に尽くされました。その28年間の不断のご尽力を今振り返りますと、ホワイト先生の俳句は、「一つの道を共に歩もう」というお約束の表現でございした。

ホワイト先生は、正行寺竹原住職の要請で毎年来日し、少なくとも年に1回は正行寺で講話をされ、その数は38回に及びました。ここで紹介する28の講話は、2021年11月6日に三輪精舎でお亡くなりになる少し前に、このウェブサイトのために先生ご自身が選ばれたものであります。

ホワイト先生の正行寺講話は、古代インド哲学から現代科学、美術史、西洋哲学、詩歌、特に俳句に至るまで、広範囲に及んでいます。講演では、これらのテーマを、「空」「縁起」「無常」「すべての有と無の一如」といった佛教の根本原理との深い関わりにおいて、深く考察されました。

ホワイト先生は、正行寺で毎年行う講演のために、テーラバーダの英訳パーリ教典だけでなく、涅槃経、法華経、金剛経、華厳経、大無量寿経等々の英訳大乗佛教経典を渉猟、非常に詳しく佛教を勉強されました。特に真宗に対する理解の深さと明晰さは、三輪精舎設立に深く関わったことにより生じたものであり、またそれを反映しています。その結果、2021年4月12日に三輪精舎で行われた彼の最後の講話『阿弥陀佛と超越と他者性』は、非常に深い内容を湛える極めて重要なものでありました。それは、彼の丹念な研究の集大成であるだけでなく、ロンドンで真宗の信者たちと協力して、三輪精舎という佛教寺院を設立し、発展させてきた経験から導き出された結論でもあります。

彼が私と一緒に英訳した次の一茶の俳句は、たとえ死の間際でもそうであられたように、常に「行為のために行為する」という無我なる彼のすがたをよく表していますので、ここに引用させて頂きます。

蝶とぶや
此世に望み
ないように

Talks at Shogyoji

by John White

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